2008-07-09

大学における人材のプール機能の喪失

週刊ダイヤモンド 7月12日号『2009年 新卒採用活動総括「超売り手市場」の終焉』を読んでいたら
「ゆとり教育の時代、有名大学出身ということが一定のレベルを担保することを意味しなくなった」
という記述があった。

企業側から見ると、一定のレベルを担保してくれた人材プール機能が失なわれつつあるように見えるのは確かなんでしょう。そのレベルというのがブランドの源泉だと思うのですが、大学がそれを放棄してしまったかのようです。
ただ、一定のレベルを担保しないきっかけを作ったのは、「ゆとり教育」ではなく目先の入学金、受験料、授業料に目がくらんだ大学側(特に私立)ではなかったか。

ありがたくも、入学者数や学部在籍者数の情報をWebに掲載してくれている早稲田大学を例にとってみます。

定員を増やす~1990年前半まで

学生を多く在籍させれば、授業料による収入安定につながるが、定員を大幅に超過しすぎると、政府からの補助金がカットされてしまう。
(そもそも、私立大学の定員を決めるのってどういうルールに則っているのかわからないが、ひとまずおく)

定員を増やすのに、1990年ごろまで続く18歳人口の増加が利用される。

大学全入時代 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A8%E5%85%A5%E6%99%82%E4%BB%A3


1980年代後半から1990年代前半、バブル期に18歳人口がピークを迎えたことや大学不合格者が増加したことにより、各大学に臨時定員増加が認められた。これは後に18歳人口が減少することを前提とした、あくまで一時的な措置であったが、政治家や私学関係者の働き掛けにより、国立大学は元に戻すが、公立大学と私立大学は臨時増加分の半分を維持してよいこととされた。




一旦確保した学生数をキープ~バブル崩壊後

学生は入学すれば、安定して授業料を払ってくれる存在。
減らすことは経営の死活にかかわる。

早稲田大学|大学案内|数字で見る早稲田|学生数推移 1990~2007
http://www.waseda.jp/jp/global/guide/databook/2007/number02.html

早稲田大学|大学案内|数字で見る早稲田|学部入学者数 1990~2007
http://www.waseda.jp/jp/global/guide/databook/2007/number03.html

1990年前半が18歳人口のピークなので、2000年以降学生数は減少していてもよさそうだが、むしろ増えている。ということは出ていく人より、入ってくる人の数のほうが多いということ。

少子化が進むのに、入学者数が維持または増加されていたら、入学に必要な学力レベルは低下していく。
しかも、一般推薦、特別選抜の枠の人数が増加している。
一般入試を経由して入学した学生の割合は、1990年 85%→2007年 65%と変化している。

授業のレベルは学生の最低レベルに合わせなければならないとすれば、高校の復習のような講義(?)が増えているのもしかたないか。

# このあたりのからくりは、『学力低下は錯覚である』に詳しい。
# 中学入試の裾野が広がった結果、偏差値50のレベルが下がったのと同じ話。



で、冒頭のひとことにつながると。

バブル当時、定員を減らさないように活動した人は、
1) 増員した定員分、学生は入学してくれる
2) 自分の大学に入学する人の学力レベルは変わらない
というふうに考えていたのでしょう。

財源としての学生は確保できる。
どうすれば、卒業生の品質と、その結果としてのブランドは維持できるのかという観点が必要だったんですね。

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